先日、『トラン・ブルー』に無事入社することが出来たという記事を書きました。
今回はそのトラン・ブルーで何を学んだかについて書きたいと思います。
トラン・ブルーに入社した時、私は全くと言っていいほどの素人でした。
パン教室でパンを作ったり、休日に自宅でパンを作ったりという程度です。
恥ずかしいことに、バゲットとバタールの違いすら分かっていませんでした。
フランスパンは全部バゲットだと思っていて、バタールって何？というレベルです。（笑）
今思えばよくトラン・ブルーに入れたなと思います。
そしてなにより、こんな私をよく採ってくれたなと改めて感謝の気持ちでいっぱいです。
そんなレベルですからトラン・ブルーで学ぶことはすべてが新鮮で楽しいものでした。
学んだことはすべてが宝物ですが、一番大事なことは“パン作りに取り組む姿勢”です。
ではトラン・ブルーのパン作りの何がすごいのか？ということですが、実は取り立ててすごいことは何もありません。
というと大変失礼な発言と思われるかもしれませんが、社長自らもおっしゃっているように“基本に忠実に作る”ことを実践しているのみです。
ですが、この“基本に忠実に”というレベルが非常に高いのです。
仕込みで言えば、生地の捏ね上げ温度や生地の状態、丸めで言えば、生地の表面の滑らかさや張り具合、デニッシュのカットで言えば、寸法や柔らかさなど、ありとあらゆる点で細かく厳しくチェックされます。
実際に、吸水を０．５％増やしてくれという指示があったり、イーストの量も０．０５％単位で設定されていたりします。
そして極めつけは、成形したクロワッサン生地の冷板への並べ方、乾燥を防ぐための布の湿らせ具合、その布のかぶせ方までチェック、指導されます。
これらのことから私が感じるのは、社長の中にはほんの小さなことでもありとあらゆるすべての事柄について、あるべき姿と言いますか基準があるということです。
これらのことは一つ一つは小さなことかもしれません。
ですが、この小さなことをないがしろにせず、常にあるべき姿になっているかをチェックと修正を繰り返して基準をクリアする努力をしているのです。
この小さなことは、社長の頭の中には無数にあるのだと思います。
その無数の小さなことをハイレベルで当たり前のようにクリアして積み重ねていくことこそが、トラン・ブルーの凄さなのだと感じます。
これらのことはすべてが“おいしいパンをつくるため”につながっています。
そして最終的には“お客様に喜んでもらうため”につながっているのです。
カセルは国産小麦化したため、もはやトラン・ブルーと同じ配合のパンはありません。
※追記：２０１９年８月２６日をもちまして国産小麦１００％ではなくなりました。
詳しくはこちらをご覧ください。
形が同じものもクロワッサンや食パンなどの定番商品を除いてはほぼありません。
サンドイッチがあったり、総菜系のパンが多かったり、焼き菓子の詰め合わせがあったり、トラン・ブルーとは商品構成もかなり違います。
おそらくトラン・ブルーを知るお客さんがカセルにいらっしゃったら「えっ、本当にトラン・ブルーで修行したパン屋さん？」と思われるでしょう。
私がやりたいこと、お客様にしてあげたいことを考えた結果、このようなトラン・ブルーとは違った形になりました。
ですが、私の中でトラン・ブルー学んだ最も大事なことは全く変わっていません。
それが“パン作りに取り組む姿勢”なのです。
パンのレシピ自体を教わったことは、結果的にですが実はあまり重要ではありません。
レシピだけではおいしいパンはできないことを知ったからです。
そのレシピに示されたパンをおいしく作るためには、やはり一つ一つの作業を基本に忠実に行うということ、こちらのほうがよっぽど重要なのです。
トラン・ブルーとは違うことをやるときでも、この“パン作りに取り組む姿勢”を基準として「社長ならどうするだろう。」と常に考えています。
この“パン作りに取り組む姿勢”こそが私にとってトラン・ブルーで学んだ一番大切なことなのです。
子は親の背中を見て育つといいますが、私もその偉大なるパン職人の背中を見て育った一人です。
社長の背中は、遥か遠い遠い彼方かもしれません。
ですが、その背中はとてつもなく大きいので、遥か彼方からでもはっきりと見ることが出来ます。
おかげでこんなちっぽけな私でも迷わず目標に向かって前に進むことが出来ています。
そんな気持ちが強くなっていく今日この頃です。
（最近はアブコ（ブリの幼魚）を釣っています。今シーズン中にブリ（成魚）を釣ることを目標にしました。出世魚の様に出世したいシェフです。（笑））
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