先日、レーズン種の記事を書きましたので、カセルが使うパン酵母について書きたいと思います。
カセルが使うパン酵母は、市販のものが2種類と自家培養のレーズン種になります。
ちなみに“パン酵母”と“イースト”は同じ意味で使われます。
しかし、“イースト”と“イーストフード”が混同されることが多いことから、“イースト”と呼んでいたものを“パン酵母”と呼ぶことになりました。
市販のパン酵母は、ルサッフル社の“インスタントイースト(赤)”と“セミドライイーストゴールド”を使っています。
(商品名にはまだ“イースト”が使われています。)
インスタントイーストとセミドライイーストの違いですが、簡単に言えばインスタントイーストは冷凍しない生地用、セミドライイーストは冷凍する生地用です。
インスタントイースト、セミドライイーストそれぞれに赤とゴールドがあります。
赤とゴールドの違いですが、赤は砂糖の少ない生地用、ゴールドは砂糖の多い生地用です。
ですのでカセルでは、砂糖が少なく冷凍しない生地用としてインスタントイースト(赤)を、砂糖が多く冷凍する生地用としてセミドライイーストゴールドを選んでいるということなのです。
市販のパン酵母のいいところは、発酵力が安定しているところです。
『サッカロマイセス・セレビシエ』という製パンに適した単一酵母のみを培養しているので安定しているのです。
発酵が安定しているということは、パン作りの工程管理にとって非常に大事なことです。
いつもより発酵が早かったり遅かったりでは、いいパンを作ることが出来ません。
あと世間でよく使われている“生イースト”ですが、カセルでは使いません。
生イーストはどうしてもイースト臭が残ってしまうので、小麦本来の香りの邪魔になってしまうからです。
(あえてイースト臭がパンらしくていいとするパン屋さんもあります。)
自家培養のレーズン種を使う理由は、オリジナリティのあるパンを作ることが出来るからです。
なぜオリジナリティのあるパンが作れるのかですが、その前にレーズン種について説明したいと思います。
レーズン種とは、レーズンに付着した酵母を自家培養して、製パンに使える状態にしたものです。
実質、酵母を選ぶことが出来ないので、レーズンについているいろいろな酵母を培養することになります。
また、一緒に酢酸菌や乳酸菌も一緒に培養することになります。
よって、いろいろな菌が複雑に絡み合うので、深い味わいを生み出すことが出来るのです。
これが、オリジナリティのあるパンを作れる理由です。
また、カセルではレーズン種を使用していることから、パンにフルーティーな香りがプラスされます。
全粒粉やライ麦を使ったパンは、穀物臭が発生しがちになるのですが、このフルーティーな香りがうまい具合に穀物臭を和らげてくれるのです。
ただ、レーズン種には欠点があります。
まず一つは、長期の保存ができないということです。
こまめに種を起こさなくてはなりません。
二つ目は、発酵力が弱く不安定という点です。
カセルでは、前日の夕方に生地を仕込んで、次の日の朝にパンを焼くようにしています。
ただ、発酵力が弱いということは、長時間発酵となるため、より深い味わいになるという利点もあります。
また、ゆっくり発酵するため、多少工程が遅れたり早まったりしても、極端に膨らみすぎたり小さかったりしないので、工程の自由度があるという利点もあります。
メリット、デメリットはありますが、レーズン種だけではすべてのパンを安定的にたくさん作ることは困難でしょう。
(困難でもやっているパン屋さんはあります。)
カセルでは、冷凍するパン生地、冷凍しないパン生地、レーズン種の特徴を生かしたパン生地を作り分け、安定的にパンを作り出せるように3種類のパン酵母を使っているということなのです。
(ブログ写真のちょうどいい大きさに迷うシェフです。)