今回は私がどういういきさつでパン屋になったかの四回目です。
前回、ロッゲンメールさんのパン教室に通っていたおかげでパン屋になる決心をしたとの記事を書きました。
ですが実際にパン屋がどういう仕事をしているのか、そもそも食べていけるのかなど実情は全く分かっていません。
今までの仕事と生活をリセットし、新たな世界へ飛び込むには非常に勇気が要ります。
パン屋の実情を知らないまま会社を辞めるのはあまりにも無謀です。
パン屋になる決心をしたものの不安だらけでした。
不安を取り除くためにも、実際にパン屋さんの仕事を見せてもらおうということで、あるパン屋さんに見学をお願いしました。
そのパン屋さんは舘山寺にある『ぐーちょきぱん』さんです。
実は『ぐーちょきぱん』さんのご夫婦は私と同じ会社で働いていました。
私はご夫婦と面識はありませんでしたが、奥さんはなんと家内の職場の先輩だったのです。
そんなよしみで実際にパン屋さんの仕事を見せてもらうことになりました。
同じ会社を脱サラしてパン屋さんになったお手本がすぐ身近にあるなんてなんという偶然でしょうか。
もはや偶然ではなく導かれているような気さえしました。
当時見学させてもらった時の光景は今でも鮮明に覚えています。
その光景はまさに“感動”の一言でした。
仕込みから成形、焼成を一人で次々にこなす姿は、パン教室レベルの私から見れば神業でした。
ご主人の手から次々と作り出されるパンの数々は、どれも丁寧に作られていておいしそうなものばかり。
途中「丸めやってみる?」とご主人に声をかけてもらいましたが、圧倒されてただただ立ち尽くすばかりでした。
いつの間にか開店時間となりましたが、ここからが圧巻でした。
開店と同時にお客さんがひっきりなしに訪れて、まさに飛ぶようにパンが売れていきます。
奥さんがてきぱきと笑顔で対応していますが、作るそばからパンが売れて製造が追いつかないほどです。
そしてちょうどお昼頃でしょうか、完売閉店となったのです。
朝5時からお昼ごろまで7時間ぐらいお邪魔していましたが、本当にあっという間の出来事でした。
見学を終わるころには不安はどこかへ消えて、私のパン屋になるという決心は固まっていました。
パン屋になる決心がついたと話すと、「こんなに売れるときばかりじゃないよ。今日はたまたまだよ。」とおっしゃっていました。
ですが私には、ご主人の職人技と奥さんの接客のなせる業であり、偶然ではなく必然であるとしか思えませんでした。
この見学によってパン屋になるという夢が現実となって動き始めました。
もしぐーちょきぱんさんに見学に行かなかったら、もしくは見学に行ったとしてもパン屋の仕事が魅力的に映らなかったら、パン屋になる決心がつかなかったかもしれません。
今こうしてパン屋を営んでいられるのも、ぐーちょきぱんさんのおかげです。
あの時に見たご主人と奥さんの姿、そしてパン屋さんの姿が私のお手本として今も心に刻まれています。
(ぐーちょきぱんさんのくるみパンが食べたいシェフです。(笑))