今回、米粉100%のパン作りにチャレンジしているところですが、その訳を書きたいと思います。
お客様の中には“小麦アレルギー”のあるお子様を持つ方が少なくありません。
とあるお客様の話です。
二人お子さんがいて、上は年長さんぐらいの女の子で、下はまだ3歳ぐらいの女の子です。
下のお子さんが“小麦アレルギー”で、小麦を食べると発疹が出てしまうとのことです。
お姉ちゃんがおいしそうにパンを食べているのを見て、自分も食べたがるのですのですが、当然食べさせてはもらえません。
でもまだ小さいので、なぜ食べさせてはもらえないのか理解できず、泣いてしまうとのことです。
私はこの話を聞いてすごく胸が痛みました。
小麦が食べられないことを想像してみると、あれもこれもとかなりのものが食べられないことに気が付きます。
もしかしたら“パン”というものがどういうものなのか、ずっとわからないままということもあり得る話です。
実は、私の娘も“小麦アレルギー”を持っていました。
かれこれ15年前ぐらいになりますが、私がパン屋になる決心をして修行先を探している矢先です。
まだ生まれて数か月の娘に離乳食としてパンがゆを与えたところ、体中に発疹が出てしまいました。
診断の結果は“小麦アレルギー”でした。
パン屋になる決心をした私にとっては、非常に酷な結果でした。
娘がパンを食べられないのにパン屋になっていいものか、パン屋になるのにもやめるのにも決心を迫られ、葛藤の日々が続きました。
ですが、幸いなことに少しずつ小麦に慣れさせているうちに、アレルギー症状が出なくなったのです。
紆余曲折を経ましたが、こうして無事にパン屋の道に進むことが出来たというわけなのです。
お客様の中には小麦アレルギーと戦っている方がいらっしゃるということ、娘が小麦アレルギーを克服したからこそパン屋になることが出来たということ。
これは何かの偶然ではないような気がします。
日々お世話になっているお客様に恩返しできることはないか、パン屋の自分にできることはないかと自問した答えが、『小麦アレルギーの方でも食べられるパンを作る』ということでした。
普段小麦粉を使ってパンを作っているのに、小麦アレルギーの出ないパンを作るというのはおかしな話かもしれません。
ですが、もはやこれは神様が与えてくださった“使命”ではないかとすら思えます。
これが、米粉100%のパンを作る理由です。
さらに、卵と乳も使わないノンアレルゲンパンにしようと思っています。
これで、カセルの米粉パンは世の中の全員があんしんして食べられることになるわけです。
いくつかの問題点はありますが、試作を重ねて商品化に近づいています。
近いうちにお披露目できると思いますが、それまでもう少々お待ちください。
(荒れ模様の天気にもかかわらずたくさんのお客様が来てくださって感謝感謝のシェフです。)