カセルの労働条件

kaseru

2019年04月17日 14:31

『パン屋の未来を明るくするために』の記事で前回は、一般的な個人店の労働条件について書きました。
今回は、カセルの労働条件について書きます。

まず労働時間ですが、
 月曜日    :5:15~9:15(休憩なし 4時間労働)
 火曜日~金曜日:5:15~14:15(1時間休憩 8時間労働)
 土曜日    :5:00~14:00(1時間休憩 8時間労働)
 日曜日    :定休日
となり、週44時間労働です。
これはひと月30日の月だと、月188.57時間労働となります。

上記を超える分が残業となります。
製造スタッフ3名の今年1月から3月までの残業実績をもとに計算すると、一人当たりの月平均残業時間は12.17時間でした。

次に賃金ですが、カセルでは時給制を導入しており、現在は一時間当たり900円です。

これをもとに給料を計算すると、
 基本給 :188.57時間/月×900円/時間=169713円/月
 残業手当:12.17時間/月×900円/時間×1.25=13691円/月
 合計  :169713円/月+13691円/月=183404円/月
となります。

もちろん、月給制ではありませんので、月の稼働日数によって給料にばらつきがあります。
残業時間も忙しさによって変わってきます。
ですが、毎月大体これぐらいです。

高くもなく安くもない、ごくごく一般的な給料だと思います。

法定労働時間44時間(一般は40時間ですが、パン屋は特例措置で44時間)
・静岡県の最低賃金858円/時間
残業時間の上限月45時間・年360時間

上記の法律に則っただけなので威張れることではありませんが、カセルは間違いなくホワイトパン屋です。

で、ここからが問題なのです。

前回書きました一般的な個人店のパン屋の労働条件は、前回の記事を復習すると、
 基本給 :180000円/月(残業代込み)
 労働時間:364時間/月(26日/月×14時間/日)
 時給(換算):495円/時間
ぐらいになります。(もちろん例外はありますが一般的に)

2019/04/10





法定労働時間、残業の上限、最低賃金すべてにおいて法を犯していることになります。
いわゆるブラックパン屋ですね。

では逆に、この労働条件だといくら給料をもらわなくてはならないのか計算してみます。
上記の通り、ひと月30日ある月の法定労働時間は、188.57時間/月です。
なので、これを超える175.43時間/月が残業時間になります。
とりあえず、静岡県の最低賃金858円/月で計算してみます。

 基本給 :188.57時間/月×858円/時間=161793円/月
 残業手当:175.43時間/月×858円/時間×1.25=188149円/月
 合計  :161793円/月+188149円/月=349942円/月
となります。

要するに35万円分に相当する仕事を18万円でやらせているということです。

“社会保障完備!”をうたうパン屋もありますが、社会保障の会社負担額は2万5千円程度ですので、社会保障をつけてもサービス残業をさせたほうが得ということになります。
“社会保障完備!”は釣るための餌で、サービス残業をさせるのは、まさに釣った魚に餌はやらないということなのです。

175時間/月の残業時間ですが、過労死ラインは80時間/月と言われているので、その約二倍です。

これが個人店のパン屋の現状なのです。
この労働条件では、パン屋に夢を抱いてやってくる若者たちが、挫折してしまうのも無理がありません。

今回一連の記事を書かせていただきましたが、カセルのようなちっぽけなパン屋がどうこうできることではないのかもしれません。

ですが、ブラックパン屋が多い中で、カセルも含めてちゃんとやっているパン屋があることを知ってもらいたかったのです。
パン屋に就職する若者が、こうしたちゃんとしたパン屋を選べるような目を持ってもらいたいのです。

そして何よりも、ブラックパン屋がこの世からなくなってほしいのです。
ちゃんとやっているパン屋があることを知って、ホワイトパン屋になってほしいのです。

私は脱サラしてパン屋になりました。
楽なことばかりではありません。
むしろ大変なことのほうが多いかもしれません。

でも、パン屋になったことを後悔はしていません。
自分達の手で作り出したものでお客様を喜ばせてあげられる、こんな素晴らしい仕事につけて幸せだと感じています。

そんな大好きなパン屋の仕事が、明るい未来であってほしい、そう願うだけなのです。





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